『坂の上のエイリアン』

原作：江戸川乱歩「人でなしの恋」

主人　　この人形は、人を惑わす。

　　　　君のような未来ある青年には、

　　　　余計な物だ。 君のような歯止めが

　　　　利かない若者には、危険な物だ。 

青年　　どういうことですか？ 

主人　　この人形は、人を殺しているんだよ。 

青年　　えっ？ 

主人　　この人形のせいで、

　　　　この人形に恋したせいで、

　　　　私が知るかぎり二人の男が

　　　　死んでいるのさ。 

青年　　まさか、 

主人　　もちろんこの人形が直接

　　　　手をくだしたわけじゃないがね。

　　　　一人は、この人形を私に売った男だ。 

　　　　その男はそれ以上この人形と

　　　　一緒にいると駄目になると

　　　　わかっていた。

　　　　だから私に売った。 

　　　　寂しさを埋めるため売った金で

　　　　酒に溺れた。女も買いあさった。

　　　　けれど忘れられなかったんだな

　　　　この人形が。 

 『坂の上のエイリアン』

（原作：江戸川乱歩「人でなしの恋」

／2009年初演台本より） 

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学生　　ここで、何してるんですか？ 

老人　　海を、みてました。 

学生　　私も、よくそこに座って、海みます。

　　　　バスめったにこないし。 

　　　　ああ、こんな暗い海のときは

　　　　さすがにみないけど…。 

老人　　ここは、あなたの特等席でしたか。

　　　　それは、すみません。 

学生　　ううんいいんです。いいんです。

　　　　ただ、なんか気になって。 

老人　　いいところです。

　　　　空と海と陸が絶妙に重なり合って、 

　　　　・・・なによりも、この匂い。 

学生　　匂い？ 

老人　　他の海とは違う匂いがするんです。 

『flowflow』

（原作：小川未明「赤い蝋燭と人魚」

／2012年初演台本より）